2026.04.24
食品・ヘルスケア業界の営業課題と解決アプローチ
業界別ガイド
食品・ヘルスケア業界で「営業が回らない」と感じたら読む記事
月曜朝、FOODEXで交換した120枚の名刺がデスクの隅に積まれたまま。先週のスーパーマーケット・トレードショーで「ぜひ一度お話を」と言ってくれたバイヤーにも、まだ連絡できていない。自分が営業に出れば売れるのはわかっている。でも経営の仕事もある。採用も進まない。
こういう状況が半年、1年と続くうちに、気づけば競合に棚を取られている。ヘルスケア企業の経営者なら、「施設長に会えさえすれば勝てるのに、受付で止まる」という歯がゆさを何度も味わっているはずです。
この記事では、食品業界とヘルスケア業界それぞれの営業課題を現場の解像度で分解し、社員5名でも10名でも回せる打ち手を整理しました。
食品業界とヘルスケア業界、営業の「つまずき方」はどう違う?
どちらも「営業がうまくいっていない」と感じている点は同じでも、つまずいているポイントはかなり違います。食品業界は商流の複雑さ、ヘルスケア業界は規制と接触の壁。下の表で並べてみると、打ち手が変わる理由が見えてきます。
食品業界の課題
- 1.卸依存の商流
売上の大半が特定卸経由。価格決定権がなく利益率が低下 - 2.属人化した営業体制
ベテラン1人に売上集中。離職=売上消失リスク - 3.展示会後のフォロー不在
名刺は集まるが後追い体制がなく商談化ゼロ
ヘルスケア業界の課題
- 1.規制対応で手が止まる
薬機法等の対応に工数を取られ新規開拓に回せない - 2.意思決定者に会えない
受付で止まり施設長・医師への直接提案が困難 - 3.長期商談の管理不全
半年〜1年の案件をExcel手入力で管理し漏れが発生
| 項目 | 食品業界 | ヘルスケア業界 |
|---|---|---|
| 営業の壁 | 卸・問屋経由の商流が複雑で、メーカーがエンド顧客の声を直接拾えない。価格競争に巻き込まれやすい | 薬機法などの規制対応に工数を取られ、新規開拓に回す時間がない。提案にはエビデンスが必須で難易度が高い |
| 関連法令 | 食品表示法、食品衛生法、景品表示法(機能性表示食品の届出制度含む) | 薬機法、医療機器規制、個人情報保護法(要配慮個人情報) |
| 商談のスピード感 | 1〜3ヶ月。棚替え時期(春・秋)に案件が集中する | 3〜12ヶ月。トライアル導入や予算化プロセスが必要 |
| 会うべき相手 | バイヤー(小売)、商品部長(卸)、調達担当(外食チェーン) | 医師・薬剤師、施設長・事務長、購買部門の決裁者 |
同じ「営業が足りない」でも原因が違えば処方箋も変わります。自社がどちらの壁にぶつかっているかを見極めるところが出発点です。
食品メーカーの営業は、なぜ「商品力があるのに売れない」のか?
卸依存から抜け出せない構造
地方の食品メーカーでよくある光景があります。地元の卸問屋と20年来の付き合いがあり、売上の8割がその1社経由。安定はしている。けれど卸のマージン分だけ利益率は削られ、棚の場所もバイヤーの判断次第。自社でコントロールできる余地がほとんどありません。
「直販もやりたい」と思っても、卸との関係を壊すわけにはいかない。その板挟みの中で、新しい販路への営業はいつも後回しになります。
国内加工食品市場は2025年に約33兆円規模と推計されている。健康志向食品やプラントベース食品など成長カテゴリでは、従来の卸ルート以外の販路開拓が売上拡大の鍵になっている。
出典:矢野経済研究所「食品産業年鑑 2025年版」
ベテラン1人に売上が集中するリスク
「あの得意先は田中さんしか対応できない」。食品業界ではこの手の属人化が根深く残っています。田中さんが辞めた途端に年商の2割が消える――そんなリスクを抱えながら、代わりの営業を採用できないまま年が過ぎていく。地方で営業経験者を中途採用するのは本当に難しく、入社しても業界知識と取引先との関係構築に1〜2年かかることも珍しくありません。
展示会に出ても受注ゼロで終わる
FOODEXに200万円かけて出展し、名刺は100枚集まった。でも翌週からは通常業務に追われ、フォローの電話は1本もかけられなかった。3ヶ月後に「あのとき興味を持ってくれたバイヤー」はもう別のメーカーと話を進めていた。出展費用だけが残った。この話は、規模を問わず多くの食品メーカーで繰り返されています。原因はいつも同じで、展示会後のフォロー体制が決まっていないことです。
ヘルスケア企業の営業が止まる3つの壁とは?
規制対応で営業の手が止まる
ヘルスケア業界は薬機法をはじめとする規制が重く、営業資料ひとつ作るにも法務チェックが必要です。大手なら専任の薬事担当がいますが、社員10名前後の会社では営業担当が兼務するしかない。午前中は薬事申請の書類を整理し、午後にやっと電話を3本かけて1日が終わる。新規開拓どころではなくなります。
国内ヘルスケア関連市場(医療機器・介護・健康関連サービス含む)は2025年度で約26兆円と推計されている。高齢化と予防医療ニーズの拡大で市場は伸びているが、参入企業の増加で競争も激しくなっている。
出典:富士経済「ヘルスケア関連市場の将来展望 2025」
施設長や医師に会えない
病院やクリニック、介護施設に電話しても、受付か事務担当で止まる。「資料を送っておいてください」で終わり、施設長や医師に直接話す機会が得られない。たまにアポイントが取れても、多忙な相手に許された時間は15分。一般的な営業トークでは響かず、論文データや導入実績をコンパクトにまとめた提案力が求められます。
半年〜1年の商談を管理しきれない
ヘルスケア業界の商談は、初回接触から受注まで半年以上かかることがザラです。トライアル導入、院内の承認プロセス、予算化――ステップが多い。それなのに、進捗をExcelの手入力で管理しているケースが少なくありません。「あの案件、いまどのフェーズ?」と聞かれて誰も即答できない状態では、追いかけるべき商談が漏れ続けます。
2026年の法改正・業界トレンドは営業にどう影響する?
2026年 注目の法改正タイムライン
2025年 成立
改正労働施策総合推進法(カスハラ対策義務化) ― 2026年度から企業に防止措置義務
2025年〜段階施行
機能性表示食品の届出・品質管理規制強化 ― 紅麹問題を受け届出要件を厳格化
2026年4月
電子処方箋の普及拡大・オンライン診療恒久化 ― 医療DXで営業チャネルの前提が変化
2026年度〜
改正個人情報保護法の要配慮個人情報ガイドライン見直し ― ヘルスケアデータの取扱いに影響
カスハラ対策の義務化が営業現場を変える
2025年に成立した改正労働施策総合推進法により、2026年度からカスタマーハラスメント対策が企業の義務になります。食品業界なら小売バイヤーとの値下げ交渉、ヘルスケア業界なら医療機関窓口での無理な要求対応など、営業の現場は直撃を受けます。社内方針の策定、相談窓口の設置、対応マニュアルの整備。営業組織の体制を見直す機会として、経営者が今すぐ着手すべきテーマです。
機能性表示食品の届出要件が厳しくなっている
2024年の紅麹問題をきっかけに、機能性表示食品の届出・品質管理の規制が段階的に強化されています。食品メーカーにとっては、商品の訴求方法だけでなく営業トークの表現にも直接影響する話です。営業部門と品質管理部門が別々に動いていると、知らぬ間にコンプライアンス違反を起こすリスクがあります。
医療DXで営業チャネルの前提が変わった
電子処方箋の普及、オンライン診療の定着。医療現場のデジタルシフトは不可逆的に進んでいます。それに伴い、ヘルスケア業界では「対面だけの営業」では接点を作れない場面が増えました。ウェビナーでのエビデンス共有とオンライン商談を組み合わせたハイブリッド型が、もはや特別な方法ではなく標準になりつつあります。
少人数でも営業を「仕組み」にするには何から始める?
まず営業活動を紙に書き出す
いきなりCRMを入れても使いこなせなければ意味がありません。最初にやるべきは、「誰が・どの顧客に・どんな頻度で・何を提案しているか」を紙1枚に書き出すこと。食品メーカーなら卸経由と直販の件数比率、ヘルスケア企業ならアプローチ先リストと各案件のフェーズ。これだけで「手つかずのまま放置されている商談」が可視化されます。
ターゲットとトークを絞り込む
「片っ端から電話する」「とりあえず訪問する」は、5人の営業チームがやる戦い方ではありません。業界ごとに「今期アプローチすべき企業リスト30社」を決め、その30社に刺さるトークスクリプトを作る。ここに時間をかけるかどうかで、同じ架電100件でもアポイント獲得率が2倍変わることは珍しくありません。
新規開拓を「週のルーティン」にする
新規開拓を担当者の気分に任せると、忙しい週はゼロ件、余裕がある週だけ動く、というムラが出ます。「毎週火・木の午前中はアウトバウンドコールの時間」「週15件のコール、3件のアポイントを目標にする」。数字と時間帯を決めるだけで、営業活動は個人技から組織の仕組みに変わります。スクリプトの品質とリストの精度さえ担保すれば、経験の浅いメンバーでもアポイントは取れます。
自社だけで抱えず、外部の力で立ち上がりを早くする
営業組織をゼロから作ると、採用・教育・仕組みづくり・PDCAの定着まで1〜2年はかかります。その時間を半分に縮める方法のひとつが、営業コンサルティングや営業代行の活用です。ただし大事なのは「丸投げ」にしないこと。スクリプト・リスト・商談録画を共有しながら進める伴走型であれば、外注期間中にも社内にノウハウが残ります。契約が終わった後に自走できる状態を最初からゴールに据えておくことが、外部パートナー選びの基準になります。
まとめ:商品力を売上に変えるのは「営業の仕組み」
食品もヘルスケアも、市場は伸びています。問題は市場ではなく、その市場に自社の商品を届ける仕組みが整っていないこと。名刺が積まれたまま、ベテランひとりに売上が偏ったまま、受付で止められたまま。この状態を変えるのに、大規模な投資は要りません。リストを絞り、スクリプトを作り、週の行動量を決める。それだけで半年後の数字は変わり始めます。
よくある質問
食品メーカーが卸依存から抜け出すにはどうすればいい?
卸との取引を維持しながら、直販チャネルを並行して育てるのが現実的です。まず売上の卸比率と直販比率を数字で把握し、直販で狙うターゲット(例:地域の飲食チェーン、EC)を絞り込みます。週5件など小さな行動量を決めてアウトバウンドを始めるだけでも、半年後のパイプラインは見違えます。
ヘルスケア業界で意思決定者にたどり着けないときの突破口は?
受付突破の電話に頼り切ると疲弊します。学会・セミナーへの共催や登壇で接点を作る、ウェビナーでエビデンスを発信して問い合わせ導線を引くなど、「会いに行く」のではなく「向こうから来てもらう」チャネルを持つと状況が変わります。
営業代行を使うとノウハウが社内に残らないのでは?
丸投げ型の代行ならその懸念は正しいです。スクリプト・ターゲットリスト・商談録画を毎週共有し、振り返りを一緒にやる伴走型であれば、外注期間中にも社内にナレッジが蓄積されます。契約終了後に自走できる状態をゴールに置くかどうかが分かれ目です。
展示会に出ても受注につながらない原因は?
最大の原因は、展示会後のフォロー体制が決まっていないことです。名刺交換した翌営業日にお礼メールを送り、1週間以内に電話でヒアリングする。この2ステップを仕組みにするだけで商談化率は大きく改善します。出展費用だけ払って後追いゼロが、最も高くつく投資です。
少人数の営業チームでCRM導入は必要?
5人以下のチームなら、最初はスプレッドシートで十分です。大事なのはツールではなく「案件のフェーズと次のアクションが全員に見えている状態」を作ること。その運用が回ってから、必要に応じてCRM・SFAを検討しても遅くありません。
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株式会社START WITH WHYは、食品・ヘルスケア業界を中心に営業コンサルティングと営業代行を手がけています。「何から手をつければいいかわからない」という段階でも構いません。30分のオンライン相談(無料)で、状況に合った最初の一手を一緒に考えます。
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