2026.04.27
インサイドセールスの立ち上げ方|ゼロから成果が出るまでの90日間
営業ノウハウ
インサイドセールスの立ち上げ方|ゼロから成果が出るまでの90日間
月曜朝、営業会議。「今月の新規アポイント、何件あった?」と聞くと沈黙が続く。外注のテレアポ会社は月30万円かけて質の低いアポイントを5件。FSが訪問すると「そもそもニーズがなかった」で終わる――。従業員50名前後の食品卸やヘルスケア系メーカーで、実際にこの光景を何度も見てきました。
この状態を変えるために、社内にインサイドセールス(IS)を立ち上げる会社が増えています。電話・メール・オンライン商談を組み合わせて、見込み客との関係を社内で育てる仕組みです。ただ、「やりたい」と思っても「何から手をつければいいのか」で止まる経営者が大半です。
この記事では、専任1名・90日間でインサイドセールスを立ち上げるロードマップを3フェーズに分けて書きました。「うちの規模でもできるのか」と迷っている方に向けて、判断材料をすべて詰め込んでいます。
90日ロードマップ
PHASE 1
Day 1–30|土台づくり
- ターゲットリスト500件作成
- トークスクリプトv1完成
- 担当アサイン+ツール準備
PHASE 2
Day 31–60|実行と改善
- 1日30〜50件の架電開始
- 週次レビューで数値検証
- スクリプト+リスト改善
PHASE 3
Day 61–90|仕組み化
- KPI本格運用+目標管理
- IS→FS引き渡しルール明文化
- ナレッジ蓄積で属人化解消
インサイドセールスとフィールドセールスは何が違うのか?
訪問するか、しないか
インサイドセールスは訪問しない営業です。電話・メール・Web会議で見込み客にアプローチする。一方のフィールドセールス(FS)は対面の商談・提案が中心になります。
ここで大事なのは、ISとFSの「どちらが上か」という話ではない点です。ISがアポイント獲得と見込み客の育成を担い、FSが商談・クロージングに集中する。この分業が、限られた人員でも売上を伸ばす仕組みの根幹です。地方の食品メーカーで営業が3名しかいなくても、IS担当を1名立てるだけでFS2名の商談数が倍になった事例を私たちは複数見てきました。
なぜ中小企業ほどインサイドセールスが合うのか?
「ISって大企業の話でしょ」と思うかもしれません。逆です。中小企業のほうが相性がいい。理由は3つあります。
まず、移動コストの問題。地方企業ほど訪問1件の移動に片道1時間かかるケースがざらにあります。ISなら移動ゼロで、1日の接触件数を3〜5倍に増やせます。次に、少人数で回せること。専任1名+兼任1名の2名体制でもスタートできるので、大規模な採用は不要です。そしてデータが残ること。架電履歴・メール開封率・商談化率が自動で蓄積され、改善の手がかりが常にある状態を作れます。
立ち上げ前に決めておかないと失敗する3つのこと
90日のロードマップに入る前に、経営者として決めておくべきことが3つあります。ここを曖昧にすると、途中で「やっぱり違った」となってやり直しになります。
1. ISを入れる目的を1つに絞る
「新規アポイントの獲得数を増やしたい」のか、「展示会で集めた名刺のフォロー体制を作りたい」のか、「既存顧客を掘り起こしたい」のか。目的が違えばKPIもツールも人員配置もまったく変わります。たとえば展示会フォローが目的なら、年間の展示会スケジュールに合わせてIS稼働を設計する必要がある。新規開拓が目的なら、リスト購入の予算確保が先です。
2. 対象顧客を最初は1セグメントに絞る
「全部の見込み客に当たりたい」という気持ちはわかります。ただ、立ち上げ期に対象を広げすぎるのは失敗パターンの典型です。業界・企業規模・エリアで優先順位をつけて、最も受注確度が高いセグメントだけに集中してください。たとえばホテル向けサービスを扱う会社なら、まず「客室50〜100室の地方ビジネスホテル」に絞る。反応が見えてから広げても遅くありません。
3. FSへの引き渡し基準を数字で決める
ISがどこまで担当し、どの段階でFSにバトンを渡すのか。この線引きが感覚のままだと、「ISがアポイントを取ったのにFSが放置する」「FSが自分でアポイントを取ってしまいISの存在意義がなくなる」といった問題が必ず起きます。具体的には「BANT条件(予算・決裁者・ニーズ・導入時期)のうち2つ以上を確認できたらFSに引き渡す」というルールを紙に書いて共有してください。
【フェーズ1】1〜30日目は何をすればいいのか?
最初の30日間は「仕組みの土台」を固める期間です。アポイントを取ることよりも、アポイントが取れる状態を作ることに集中します。
ターゲットリストの作成
まず架電・メール送付の対象リストを作ります。社内に眠っているリソースを洗い出してください。過去の名刺交換データ、問い合わせ履歴、展示会の来場者リスト。これだけで200〜300件は出てくる会社が多いです。足りなければ企業データベースサービスでリストを購入します。
リストの質は成果に直結します。最低限「企業名・業種・従業員規模」「担当者名・役職・連絡先」「過去の接触履歴」「想定されるニーズ・課題」の4項目を整理しておいてください。
トークスクリプトの設計
IS担当者が電話で話す内容の骨格を台本にします。一字一句読み上げるものではありません。「最初の15秒で何を伝えるか」「よくある断り文句にどう返すか」「ヒアリングで聞くべき項目は何か」、この3つを整理しておくだけで通話の質がまるで変わります。
完成度は50点で構いません。実際に使ってみて週次で直すサイクルのほうが、机上で100点を目指すより早く成果につながります。
ツールの選定と導入
立ち上げ期に高額ツールは不要です。必要なのは3つだけ。顧客管理はGoogleスプレッドシートで十分回ります(HubSpot無料版も選択肢)。架電は既存の電話回線で問題なし、通話録音機能があると振り返りに使えます。Web会議ツールはZoomかGoogle Meetを1つ決めておく。それだけです。
担当者のアサインと教育
理想は専任1名ですが、兼任スタートでも構いません。大事なのは「この人がISを担当する」と社内に宣言すること。営業経験がなくても、電話対応に抵抗がなく記録を丁寧につけられる人であれば十分やれます。むしろ「営業っぽい押しの強さ」がない人のほうが、ヒアリング型のISには向いていることが多い。
【フェーズ2】31〜60日目はどう回せば成果につながるのか?
土台ができたら架電・メールを開始します。このフェーズで最も大切なのは、数をこなしながら毎週振り返ることです。「たくさんかける」だけでは伸びません。
架電・メールの実行
1日の目標架電数を決めて毎日実行します。立ち上げ期の目安は1日30〜50件。少なく感じるかもしれませんが、記録の質を保ちながら続けられる数を設定してください。100件かけても記録がなければ、どこを直せばいいかわかりません。
週次レビューの実施
毎週30分、IS担当者と経営者(または営業マネージャー)で数値を確認します。見る指標は「架電数・接続率(担当者と話せた割合)」「アポイント獲得数・獲得率」「商談化数(FSに引き渡した件数)」「よくあった断り理由」の4つ。
数値だけでなく、「どんな業種からの反応が良かったか」「スクリプトのどこで会話が止まったか」といった定性的な気づきも共有してください。この30分の振り返りを毎週やるかどうかで、3ヶ月目の数字が大きく変わります。
スクリプトとリストの改善
週次レビューの結果をもとにスクリプトとリストを調整します。反応が良いセグメントにリストを寄せ、断られやすいポイントのトークを直す。たとえば「価格を聞かれた瞬間に切られる」なら、価格の前に導入効果を伝える順番に変える。この小さな修正の積み重ねが、90日後の成果を決めます。
【フェーズ3】61〜90日目でどうやって仕組み化するのか?
3ヶ月目に入ると、担当者のスキルが安定し、どのセグメントに注力すべきかも見えてきます。このフェーズでは、属人的な活動を「誰がやっても再現できる仕組み」に落とし込みます。
KPIの本格運用
フェーズ2まではデータを「貯める」段階でした。フェーズ3では目標値を設定し、達成度を週次で管理します。
| フェーズ | 期間 | 主要KPI | 目標値の目安 |
|---|---|---|---|
| フェーズ1(土台づくり) | 1〜30日目 | リスト件数 / スクリプト完成 | リスト500件以上 / スクリプトv1完成 |
| フェーズ2(実行と改善) | 31〜60日目 | 架電数 / 接続率 / アポイント獲得率 | 月間600件架電 / 接続率30% / アポイント獲得率3〜5% |
| フェーズ3(仕組み化) | 61〜90日目 | 商談化率 / パイプライン金額 | 商談化率40%以上 / パイプライン月間目標の1.5倍 |
引き渡しルールの明文化
ISからFSへの引き渡し基準を文書にします。「BANT条件を2つ以上確認」「担当者が導入意欲を示している」「競合検討中」など、条件を箇条書きにして、IS・FS双方が見える場所に貼っておく。Slackのピン留めでもホワイトボードでも構いません。「感覚」が残っている限り、連携トラブルは消えません。
ナレッジの蓄積と共有
90日で得られた知見を、担当者の頭の中だけに留めないでください。業界・規模別の反応傾向、効果的だったトークのパターン、よくある質問への回答例、失注理由の分類と対策、曜日・時間帯別の接続率データ。これらをスプレッドシート1枚にまとめておくだけで、担当者が交代しても成果が落ちにくい体制になります。
インサイドセールスの立ち上げでよくある失敗は?
立ち上げでつまずく会社には共通パターンがあります。事前に知っておくだけで回避できるものばかりです。
失敗1:1ヶ月で「効果がない」と判断してやめる
安定成果までの平均は約3ヶ月。最初の1ヶ月は「データを集める期間」と割り切ってください。1ヶ月目でアポイントが3件しか取れなくても、その3件の商談化率が高ければ十分手応えがあるはずです。成果の判断は90日後にしてください。
失敗2:先にツールを買ってしまう
「まず高機能なCRMを入れよう」と初期費用をかけすぎるケース。ツールの導入・設定に2週間取られて、肝心の架電が後回しになる。業務フローが固まってからツールを選んでも遅くありません。最初はスプレッドシートで回してください。
失敗3:ISとFSがバラバラに動く
ISが取ったアポイントにFSが対応しない。FSが「質が低い」と文句を言ってISとの関係が悪化する。週次で合同ミーティングを行い、アポイントの質について双方向でフィードバックする場を作れば、この問題はほぼ解消します。
失敗4:架電しても記録しない
電話をかけっぱなしで結果を記録しなければ、改善のしようがありません。「何件かけたか」「誰と話せたか」「次のアクションは何か」。この3つを毎回記録する文化を初日から作ることが、90日後の成果を左右します。
よくある質問
インサイドセールスの立ち上げに何人必要ですか?
専任1名+兼任1名の2名体制でスタートできます。営業経験は必須ではなく、電話対応に抵抗がなく記録を丁寧につけられる方であれば十分です。まず少人数で始めて、成果が見えてきた段階で増員を検討するのが現実的です。
成果が出るまでどのくらいかかりますか?
安定した成果が出るまでの目安は約3ヶ月です。最初の1ヶ月はデータ収集、2ヶ月目に改善サイクルを回し、3ヶ月目でKPIが安定する流れになります。1ヶ月で判断して撤退するのは早すぎます。
CRMなどのツールは最初から必要ですか?
不要です。立ち上げ期はGoogleスプレッドシートで十分回ります。業務フローが固まってからCRMを選定しても遅くありません。先にツールを買って設定に時間を取られるより、1日でも早く架電を始めるほうが成果につながります。
フィールドセールスとの役割分担はどう決めればいいですか?
BANT条件(予算・決裁者・ニーズ・導入時期)のうち2つ以上を確認できた段階でFSに引き渡す、というルールが実務上機能しやすいです。感覚ではなく明文化されたルールを作り、IS・FS双方が見える場所に置いてください。
インサイドセールスは大企業向けの仕組みではないですか?
むしろ中小企業に向いています。地方企業ほど訪問の移動コストが大きく、ISなら1日の接触件数を3〜5倍に増やせます。少人数でも始められて、データが自動で蓄積されるため改善サイクルを回しやすい。大企業よりもスピード感をもって導入できるのは中小企業の強みです。
90日後に「営業の仕組み」を手に入れるために
インサイドセールスの立ち上げに、大きな投資も大量の人員も要りません。専任1名、90日間。正しい手順で進めれば、それだけで成果が出る営業の仕組みが手に入ります。
最初の30日で土台を作り、次の30日で架電しながら改善し、最後の30日で仕組み化する。最初から完璧を目指す必要はありません。50点のスクリプトを週次で直していくほうが、100点を目指して3ヶ月机に向かうより確実に成果が出ます。
「自社にISは合うのか」「何人体制でやるべきか」。業界・商材・既存の営業体制によって判断は変わります。迷ったら、外部の専門家に30分だけ相談してみてください。それだけで次の一手が見えることは多いです。
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