2026.04.23
インサイドセールスとフィールドセールスの使い分け方
比較・選び方
「訪問営業とテレアポ、どっちに人を割くべき?」——まず整理したいISとFSの違い
営業担当が3人しかいないのに、既存顧客のフォローも新規開拓も全員が兼務している。移動だけで1日が終わる日もある。地方の中小企業で、こんな状態に心当たりはないでしょうか。
こうした「営業リソースの取り合い」を解消する鍵になるのが、インサイドセールス(IS)とフィールドセールス(FS)の使い分けです。ただ、言葉は聞いたことがあっても「うちの規模でやる意味あるの?」と感じる方は多いはず。まずは両者の中身を、現場目線で押さえておきましょう。
インサイドセールス(IS)とは
電話・メール・オンライン会議を使い、オフィスにいながら見込み客にアプローチする営業手法です。たとえば、展示会で名刺交換した300社に翌週まとめて電話をかけ、温度感の高い30社だけを商談候補としてピックアップする——こうした「ふるい分け」と「関係づくり」がISの本領です。移動ゼロで1日10〜20件のアプローチがこなせるため、少人数の会社ほど恩恵が大きくなります。
フィールドセールス(FS)とは
お客様のもとに直接訪問し、商談・提案・クロージングを行う営業手法です。多くの中小企業が長年やってきた「足で稼ぐ」スタイルそのもの。製造業の工場を実際に見て課題を拾う、社長室で雑談しながら信頼を積む——画面越しでは得られない情報量と関係性が、FSの最大の武器です。
どちらが優れているという話ではありません。自社の商材・顧客・体制に合った「配分」を見つけることがゴールです。この記事では、その判断基準を具体的にお伝えします。
インサイドセールス(IS)
● 移動ゼロで1日10〜20件アプローチ可能
▶ 架電数・アポイント獲得率などすべて数値で可視化できる
◆ スクリプト整備で若手でも早期戦力化
★ 地方から全国の見込み客にリーチ
フィールドセールス(FS)
● 対面の信頼感で大型案件をクロージング
▶ 現場訪問で画面越しでは得られない情報を収集
◆ 決裁者と直接会いその場で契約に進む力
★ 競合がやらなくなった今こそ訪問が差別化に
インサイドセールスとフィールドセールスは何が違う?比較表で一目瞭然
| 比較項目 | インサイドセールス(IS) | フィールドセールス(FS) |
|---|---|---|
| 主な役割 | 見込み客の発掘・育成、アポイント獲得 | 商談・提案・クロージング・既存顧客の深耕 |
| 得意領域 | 大量のリードへの効率的なアプローチ | 複雑な提案、関係構築が必要な大型案件 |
| 1日の商談数 | 10〜20件(電話・オンライン) | 2〜4件(移動時間含む) |
| 人件費・コスト | 比較的低い(移動費・交通費が不要) | 高め(交通費・宿泊費・移動時間のコスト) |
| 適した商材 | 月額数万〜数十万円のサービス、定型商材 | 月額数十万円以上、カスタマイズ提案が必要な商材 |
| 主なKPI | 架電数、アポイント獲得率、リード育成率 | 商談数、受注率、受注単価、LTV |
| 顧客との関係性 | 広く浅く、多くの見込み客と接点を持つ | 深く長く、信頼関係を築いて契約に導く |
数字で見ると差は歴然です。HubSpotの調査(2023 Sales Trends Report)によれば、営業担当者が実際に「売る活動」に使えている時間は全体のわずか33%。残りは事務作業や移動に消えています。ISを導入すると、この「売る時間」の比率を大きく引き上げられるわけです。
出典:HubSpot「2023 Sales Trends Report」
インサイドセールスとフィールドセールス、それぞれの強みと弱みは?
比較表だけでは見えない部分があります。導入企業の現場で実際に起きることを、良い面も悪い面も含めてまとめます。
インサイドセールスの強み
まず圧倒的なのは接触量です。移動時間がゼロなので、1人で1日20件の新規アプローチも現実的。トークスクリプトを整備すれば、入社半年の若手でもアポイントが取れるようになります。さらに架電数・通話時間・アポイント獲得率がすべて数値で残るため、「なぜ今月はアポイントが減ったのか」を具体的に分析できる。地方にいながら全国の見込み客へアプローチできるのも、商圏が限られがちな中小企業には大きなメリットです。
インサイドセールスの弱み
一方で、製造業向けのカスタム設備のように現物を見せないと伝わらない商材では苦戦します。「会ったこともない相手とは取引しない」という商慣習が根強い業界——たとえば地場の建設業や老舗卸——では、ISだけで信頼を得るのは難しい。また、スクリプト作成やリスト整備、CRM導入といった「仕組みづくり」に初期投資が必要な点も見落とせません。
フィールドセールスの強み
対面の信頼感は、やはり別格です。地方では「わざわざ来てくれた」こと自体が好印象につながりますし、決裁者と直接会えればその場で契約まで進むケースも珍しくありません。オンライン商談が当たり前になった今、訪問営業はむしろ「競合がやらなくなった差別化手段」になりつつあります。
フィールドセールスの弱み
最大のネックは効率です。片道1時間の訪問を1日3件入れたら、それだけで6時間が移動に消えます。交通費・宿泊費も積み上がる。そして「あの営業マンだから買っている」という属人化が進むと、退職がそのまま売上減に直結する——これは経営リスクそのものです。
Gartnerの予測(Future of Sales 2025)では、2025年までにBtoB営業のやり取りの80%がデジタルチャネルで行われるとされています。訪問営業がなくなるわけではなく、「初期接点のデジタル化」が加速するということ。つまり、ISで効率よく接点をつくり、ここぞという場面でFSが出向く——この組み合わせが今後の主流になります。
出典:Gartner「Future of Sales 2025」
うちの会社にはどちらが合う?判断フローチャート
「理屈はわかったけど、結局うちはどうすればいい?」——ここが一番の関心事だと思います。3つの質問に答えるだけで方向性が見えるフローを用意しました。
あなたの会社に合うのはどっち?判定フロー
Q1. 扱っている商材は、説明に30分以上かかる複雑なものですか?
YES → Q2へ進む
NO → Q3へ進む
Q2. 1件あたりの契約単価は月額50万円以上ですか?
YES → FS中心型 アポイント獲得はISに任せて効率UP
NO → IS+FS分業型 ISでアポイント→FSが提案・クロージング
Q3. 月間で新規アプローチしたい見込み客は50社以上ありますか?
YES → IS中心型 量をこなせるISの強みが最大限活きる
NO → 顧客が対面重視の業界なら FS中心型、それ以外は IS中心 or 分業型
繰り返しますが、「どちらか一択」ではありません。自社の営業プロセスのどこにISを入れ、どこにFSを配置するか——その設計こそが成果を分けます。
業界特性で変わる、IS×FS配分の目安
業界によって「対面が信頼を生む場面」と「効率的にふるい分けるべき場面」の比重は大きく変わります。自社の業界に近い例で考えてみてください。
食品・卸業界:既存の仕入れ先との関係が固く、新規開拓は「まず会って試食してもらう」ことが受注の入口になりやすい業界です。ただし候補先リストは数百社規模になることも多く、いきなり全社訪問するのは非効率。ISで温度感の高い先を絞り込み、実際に商品を持って訪問するのはFSが担う、という分業が相性の良い領域です。
ヘルスケア・クリニック:院長や理事長という決裁者に会えるかどうかが受注を大きく左右します。診療時間中の飛び込み訪問は歓迎されにくいため、ISで訪問可能な時間帯や関心テーマを事前に把握してからFSがアポイントを取る、という順序が効果的です。
ホテル・宿泊施設:繁忙期・閑散期で担当者の対応可否が変わりやすい業界です。ISが電話・メールで稼働状況やニーズを先にヒアリングし、商談化しそうなタイミングでFSが訪問する、というタイミング調整の役割をISが担うケースが多く見られます。
製造業・建設業:「現物を見せる」「工場を見学する」ことが提案の説得力に直結するため、FS中心になりやすい業界です。ただし新規リストへの一次アプローチだけはISに任せ、FSは商談確度の高い訪問に集中させることで、限られた人数でも訪問件数を増やさずに成果を出せます。
どの業界でも共通するのは、「訪問すべき理由がある相手にだけFSの時間を使う」という発想です。業界特性を踏まえた配分の目安を持っておくと、判断フローチャートの精度もさらに上がります。
中小企業でもできるIS×FS分業モデルの作り方は?
「分業なんて大企業の話でしょ?」と思われがちですが、従業員10名前後の会社でも十分に機能します。実際、営業3名体制の食品卸が、ISを1名追加しただけで月間アポイント数が大きく増えた例もあります。やり方は3ステップです。
ステップ1:営業プロセスを「見える化」する
今の営業活動を、以下の7工程に分解してみてください。
- ターゲットリストの作成
- 初回アプローチ(電話・メール・DM)
- アポイント獲得
- 初回商談(ヒアリング・課題確認)
- 提案・見積もり
- クロージング(契約)
- フォローアップ・既存営業
1〜3がIS向き、4〜7がFS向きの領域です。ここを混ぜたまま1人にやらせているから、移動で1日が終わるわけです。
ステップ2:「引き渡し基準」を決める
ISからFSへ商談を渡すとき、「どんな状態ならFSが動く価値があるか」を事前に決めておきます。たとえばこんな基準です。
決裁者またはそれに近い人とのアポイントであること。予算感を少なくともヒアリングできていること。導入時期の目安が聞けていること。この3点を満たしたアポイントだけをFSに渡す。基準が曖昧だと「ISのアポイントは質が低い」「FSの受注率が上がらない」と互いに不満が溜まり、分業が崩壊します。
ステップ3:小さく始めて数字で検証する
最初から完璧な体制は要りません。IS担当1名(または外部パートナー)でテスト運用し、「架電数に対するアポイント獲得率」「ISアポイントからの受注率」「1アポイントあたりの獲得コスト」の3指標を追います。3ヶ月回せば、ISが自社に合うかどうかの判断材料は十分に揃います。
IS・FS分業でよくある失敗パターンとは?
分業モデルは万能ではありません。導入した企業が陥りがちな落とし穴を3つ、先に共有しておきます。
失敗1:ISを「テレアポ部隊」としか見ていない
「とにかく電話してアポイントを取れ」——この指示だけだと、ニーズの薄い相手にも強引にアポイントを入れて件数を稼ぐようになります。結果、FSが訪問しても話が噛み合わず空振り。ISの本来の役割は「見込み客の温度感を見極めて、商談に値するタイミングでFSにつなぐ」ことです。対策として、アポイント数だけでなく「そこからの受注率」もISの評価指標に加えてください。
失敗2:ISとFSの情報共有が断絶している
ISがヒアリングした内容がFSに伝わらず、お客様に同じ質問を二度させてしまう。これは一発で信頼を失います。スプレッドシートで構わないので、ヒアリング内容・温度感・次回アクションを記録するルールを必ず設けてください。
失敗3:ノウハウが固まる前に人を増やす
「せっかくやるなら」と一気にIS担当を3名採用し、スクリプトも整わないまま走らせる。結果、誰も成果が出ずにコストだけが膨らむ——このパターンは本当に多い。まず1〜2名で型をつくり、成果が出てから拡大。これが鉄則です。
よくある質問(FAQ)
Q. インサイドセールスの導入にCRMは必須ですか?
必須ではありません。最初はスプレッドシートとカレンダーだけでも回せます。架電数・アポイント獲得率の記録さえできれば十分です。件数が月100件を超えてきたら、CRM導入を検討するくらいの感覚で問題ありません。
Q. ISを外注するのとISを自社で雇うのはどちらがいいですか?
まず外部パートナーで3ヶ月テストし、「ISが自社に合う」と確認できてから内製化するのが低リスクです。外注の場合、自社の商材理解が浅くなりがちなので、スクリプトと想定Q&Aは自社で用意してください。
Q. 営業が2〜3名の会社でもIS・FS分業は意味がありますか?
意味はあります。たとえば週の前半をIS活動(架電・メール)、後半をFS活動(訪問商談)に分けるだけでも、「移動ばかりで新規開拓が進まない」という状態は解消できます。人を分けるのではなく、時間を分けるところから始めても効果は出ます。
Q. IS導入後、どれくらいで成果が見えますか?
スクリプトとリストが整っていれば、早ければ1ヶ月目からアポイント数の増加を実感できます。ただし受注率やROIまで含めた判断には最低3ヶ月は必要です。「3ヶ月で判断する」と最初に決めておくと、途中で迷いにくくなります。
まとめ:営業体制は「気合」ではなく「設計」で変わる
インサイドセールスとフィールドセールス、どちらが正解かは会社ごとに違います。ただ、押さえるべきポイントは共通しています。
自社の商材・顧客・業界特性を正しく把握すること。営業プロセスを分解して、ISとFSの配置を設計すること。そして小さく始めて、数字で判断し、改善を繰り返すこと。この3つができれば、3名の営業チームでも売上の伸びしろは十分につくれます。
対面の信頼関係が大事な商売であることは、これからも変わりません。だからこそ、「人が会うべき場面」にFSの時間を集中させるために、ISという仕組みを使う。それが、限られたリソースで成果を最大化する現実的な営業戦略です。
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