2026.07.26

個人薬局とチェーンで攻略法が違う|薬局開拓に効く営業代行

「薬局に電話をかけても、薬剤師が調剤で手一杯で話を聞いてもらえない」。調剤薬局やドラッグストアへの新規開拓を担当する営業責任者から、こうした声を聞くことは珍しくない。個人薬局とチェーン本部とでは決裁も攻め方もまったく異なり、どこから手をつければよいか判断がつかないまま時間だけが過ぎていく。薬局 営業代行という選択肢に関心が集まる背景には、この業界特有の複雑さがある。

営業代行に頼めば取れる、という単純な話ではない。外部に任せる前に整理すべき前提がある。個人薬局とチェーン本部で何が違うのか、薬機法や調剤報酬改定がどう購買判断に影響するのか、多忙な薬剤師にどう接点を作るのか。この記事では、調剤薬局・ドラッグストアを新規開拓する際に押さえておきたい論点を、構造的な壁から具体的なアプローチ、外部の営業代行を活用する際の選定基準まで順に整理する。

執筆しているのは、食品・卸、ヘルスケア、ホテル向けサービスなど事業成長を求めるBtoB企業を中心に300社以上を支援してきた株式会社START WITH WHYである。薬局業界専門の会社ではないが、決裁構造が現場と本部で分かれていること、現場担当者が業務に追われて接触自体が難しいことなど、これまで支援してきた業種と共通する構造課題が多く、その視点から書いている。


薬局開拓の営業が直面する構造課題

薬局業界への新規開拓が難航する理由は、営業スキルの問題というより、業界特有の構造に起因することが多い。まず押さえておくべき3つの壁を整理する。

課題1. 個人薬局とチェーン本部で決裁も攻め方もまったく違う

個人経営の薬局は、店主である薬剤師が現場の判断と決裁を兼ねていることが多く、話が早い反面、規模が小さいため案件単価は限られる。一方でチェーン展開する調剤薬局やドラッグストアは、店舗担当者に決裁権がなく、本部の購買部門やエリアマネージャーを通す必要がある。この2つのセグメントを同じ営業手法で攻めようとすると、どちらにも刺さらない結果になりやすい。個人薬局向けのトークをそのままチェーン本部に持ち込んでも、決裁フローに乗らないまま終わってしまう。

チェーン本部の場合、店舗ごとに個別提案しても意思決定が進まないことが多く、まず本部の担当部署を特定し、複数店舗への展開を前提とした提案に切り替える必要がある。どちらのセグメントを主戦場にするかを最初に決めておくことが、営業設計全体の出発点になる。

課題2. 薬機法・調剤報酬改定の影響が大きい

薬局業界は薬機法による広告・表現の規制が厳しく、営業資料やトークスクリプトの表現ひとつにも注意が必要である。加えて調剤報酬は数年ごとに改定され、そのたびに薬局の収益構造や業務フローが大きく変わる。制度の変化を正確に理解していないまま提案すると、「もう対応済みだ」「その加算はうちには関係ない」と初回で信頼を失いかねない。

制度改定は薬局にとって負担であると同時に、業務の見直しを検討するきっかけにもなる。改定内容を正しく理解し、どの薬局にどんな影響が出るのかを整理したうえで接触することが、提案の説得力を左右する。

課題3. 薬剤師が現場業務に追われ、接点を作りにくい

薬剤師は調剤業務、服薬指導、在庫管理など日中の業務量が多く、営業の電話や訪問に割ける時間は限られている。特に個人薬局では薬剤師が一人で店舗運営と調剤の両方を担っていることも多く、営業電話は業務の合間に対応せざるを得ない。相手の業務の忙しさを前提にした接点設計がなければ、話を聞いてもらう機会そのものが得られない。

ドラッグストアの場合は薬剤師に加えて店舗マネージャーや登録販売者など複数の職種が関わることもあり、誰が窓口として適切かを見極めるところから始める必要がある業態もある。


薬局への提案・アプローチで押さえるべきフレーム

構造課題を理解したうえで、実際の提案・アプローチ設計に落とし込む際に意識すべきポイントを整理する。

対人業務シフトという需要トリガーを捉える

2025年以降、調剤業務の一部が薬剤師以外の職種でも対応可能になる流れや、電子処方箋の普及など、薬局を取り巻く制度環境は変化が続いている。こうした変化は、薬局側にとって業務フローの見直しや新しい体制構築の検討タイミングになりやすい。制度変化のタイミングを捉えた提案は、平時の飛び込み営業よりも受け入れられやすい。対人業務へのシフトが進むほど、薬剤師でなくてもできる業務をどう効率化するかという課題意識が生まれやすくなる。

門前薬局の系列関係を理解した提案設計にする

調剤薬局の多くは特定の医療機関の門前に立地しており、その医療機関との関係性が経営の前提になっている。門前の医療機関の方針転換や処方箋枚数の変化は、薬局の経営に直接影響する。系列関係を無視した提案は、薬局側の実情とかみ合わないことが多く、事前にその薬局がどの医療機関の門前にあるのか、どんな処方傾向があるのかを把握しておくことが提案の精度を高める。

薬剤師の業務時間を踏まえた接点設計にする

調剤の合間や開局直後・閉局前など、比較的落ち着いている時間帯を見極めて架電することが望ましい。初回の資料も、忙しい薬剤師が短時間で要点をつかめる粒度に絞る必要がある。「相手の時間を奪わない」設計そのものが、薬局業界における提案力の一部だと捉えた方がよい。電話がつながらない場合に備えて、FAXやメールなど複数のチャネルを組み合わせておくことも有効である。


具体的なアプローチ実例

薬局業界の開拓では、個人薬局とチェーン本部とでアプローチの設計がまったく異なる。同じリストに同じトークで架電しても、どちらのセグメントにも十分に刺さらない結果になりやすい。ターゲット別に整理する。

個人薬局向けのアプローチ

個人薬局は店主である薬剤師が決裁権を持つため、直接会話ができれば話は早い。一方で、開局中は電話に出られないことも多く、時間帯を見極めた架電と、閉局後や休診日を狙ったアプローチの組み合わせが有効である。地域の薬剤師会や勉強会での接点をきっかけに、その後の営業につなげる設計も効果的である。小規模ゆえに費用対効果を厳しく見られるため、小さく試せる導入プランを用意しておくことが商談化の後押しになる。

チェーン本部向けのアプローチ

チェーン展開する調剤薬局・ドラッグストアは、店舗担当者ではなく本部の購買部門やエリアマネージャーが決裁権を持つ。店舗への個別提案では話が進まないため、早い段階で本部の担当部署を特定し、複数店舗への横展開を前提とした提案に切り替える必要がある。本部の意思決定者に直接情報を届けるルートを確保できるかどうかが、案件の進み方を大きく左右する。本部提案では、個別店舗の課題だけでなく、チェーン全体の業務標準化やコスト構造にどう寄与するかという視点が求められる。

項目 個人薬局 チェーン本部
決裁者 店主(薬剤師)本人 本部の購買部門・エリアマネージャー
決裁スピード 比較的速い 稟議・比較検討で時間がかかる
効くアプローチ 地域の勉強会・直接対話 本部担当部署への横展開提案

当社が薬局向けにアウトバウンド支援を行った際は、個人薬局とチェーン本部で切り口を分け、調剤報酬改定など検討のきっかけになる変化に合わせて接触することで、商談化率1.8%を確保できたケースもあった。

薬局開拓で営業代行を活用する場合の選定基準

薬局業界の構造を理解した外部パートナーかどうかを見極めるために、契約前に確認しておきたい基準を4つ挙げる。

選定基準1. 薬機法・調剤報酬制度への理解

薬機法に抵触しない表現でトークスクリプトや資料を作成できるか、直近の調剤報酬改定の内容を正しく把握しているかは、初回接触の信頼性を大きく左右する。業界知識のない一般的な営業手法をそのまま使い回す代行会社では、早い段階で見抜かれてしまう。

選定基準2. 個人薬局とチェーン本部を使い分ける設計力

個人薬局向けとチェーン本部向けとでは、話法もターゲットリストの作り方もまったく異なる。両方を同じ手法で攻めようとしていないか、事前にアプローチ設計を確認しておきたい。

選定基準3. 薬剤師の業務時間を踏まえた接触設計

接続率の低さを織り込んだうえで、架電の時間帯や再架電のタイミング、電話以外のチャネルの組み合わせを設計できるかどうかを確認したい。「とにかく件数をこなす」という発想の代行会社では、現場の負担を増やすだけで成果につながりにくい。過去にヘルスケア領域での接触実績があるかどうかも、判断材料のひとつになる。

選定基準4. 本部接点の構築力と成果指標の握り方

チェーン本部への提案を見込む場合、本部の担当部署に直接アプローチできる体制があるかどうかを確認したい。あわせて、アポイントの件数だけでなく「決裁に近い相手とのアポ」「本部への橋渡しができた件数」など、質を含めた指標を事前にすり合わせておくことが重要である。


失敗事例から学ぶ事前確認ポイント

薬局業界の新規開拓でよくある失敗パターンを4つ紹介する。事前に確認しておけば防げるものが多い。

失敗パターン1. 個人薬局とチェーン本部を同じ手法で攻めた

個人薬局向けのトークをそのままチェーン本部に持ち込み、決裁フローに乗らないまま案件が止まるケースがある。逆に、本部向けの提案資料を個人薬局に持ち込み、規模感が合わずに敬遠されることもある。

失敗パターン2. 薬機法に抵触する表現を使ってしまった

効果効能を断定的に表現するなど、薬機法上グレーな言い回しをトークスクリプトに使ってしまい、信頼を損ねるケースがある。薬局・薬剤師は法令順守への意識が高く、表現の粗さは即座に見抜かれる。一度不適切な表現を使ってしまうと、その後にどれだけ丁寧な提案をしても、警戒が解けないまま関係が終わってしまうことも多い。

失敗パターン3. 調剤の忙しい時間帯に架電を続けた

開局直後や昼の混雑時間帯に架電を続け、現場の心証を悪化させてしまうケースがある。一度「迷惑な営業」という印象がつくと、その薬局だけでなく系列薬局全体への印象にも波及しかねない。

失敗パターン4. 門前医療機関との系列関係を把握せずに提案した

その薬局がどの医療機関の門前にあるのか、どんな処方傾向があるのかを把握しないまま提案し、実情とかみ合わない話をしてしまうケースがある。事前のリサーチを丁寧に行うかどうかが、提案の説得力を大きく左右する。これらの失敗の多くは、契約前に代行会社と業界の前提を丁寧にすり合わせていれば防げたものである。


まとめ:薬局開拓を機能させるために整えるべきこと

調剤薬局・ドラッグストアの新規開拓は、個人薬局とチェーン本部で決裁構造がまったく異なること、薬機法や調剤報酬改定の影響が大きいこと、薬剤師が現場業務に追われて接触自体が難しいことという、業界特有の構造を理解したうえで設計する必要がある。整理すると、押さえるべきポイントは次のとおりである。

  • 個人薬局とチェーン本部で、決裁者もアプローチ手法もまったく異なると理解する
  • 薬機法に抵触しない表現と、調剤報酬改定の内容を正しく踏まえた提案にする
  • 薬剤師の業務時間帯を踏まえた、負担の少ない接点設計にする
  • 対人業務シフトや電子処方箋など、制度変化のタイミングを需要トリガーとして捉える
  • 門前医療機関との系列関係を事前にリサーチしたうえで提案に臨む

外部の営業代行に依頼するかどうかにかかわらず、これらの前提を自社で整理しておくことが、薬局業界への新規開拓を機能させる出発点になる。個人薬局とチェーン本部という二つの異なるセグメントを、同じ物差しで評価しないことが、開拓計画を立てるうえでの最初の一歩になる。決裁構造の複雑さや薬機法という制約は、裏を返せば競合も同じ壁にぶつかっているということでもある。その壁を丁寧に越える設計ができるかどうかが、他社との差になる。


よくある質問

Q. 個人薬局とチェーン薬局、どちらを優先して開拓すべきですか?

自社の商材の単価と導入負荷によって異なる。小規模でも即決しやすい商材であれば個人薬局、複数店舗への横展開で単価が大きくなる商材であればチェーン本部を優先する方が効率的である。両方を同時に攻める場合は、リストとトークを分けて設計する必要がある。

Q. 薬機法に配慮したトークスクリプトはどう作ればよいですか?

効果効能を断定する表現を避け、公的機関やガイドラインに基づいた事実ベースの説明にとどめることが基本になる。判断に迷う表現は、事前に法務や薬事に詳しい担当者にレビューしてもらう体制を整えておくと安全である。

Q. チェーン本部の担当部署が分からない場合はどう調べればよいですか?

企業のIR資料や採用ページ、業界紙の取材記事から、購買や店舗運営を担う部署の情報が得られることがある。既存の取引先や業界の紹介ルートを通じて担当者にたどり着く方法も併用したい。

Q. 電子処方箋の普及は薬局への営業にどう影響しますか?

薬局の業務フローや患者対応のあり方が変わりつつあり、それに伴う体制の見直しを検討する薬局が増えている。制度変化のタイミングに合わせて、業務効率化や新しい体制構築に関する提案を行うことで、話を聞いてもらえる機会が増える可能性がある。

Q. 薬局業界向けの営業代行と、他業界向けの営業代行は何が違いますか?

薬機法や調剤報酬制度への理解に加えて、個人薬局とチェーン本部という性質の異なる2つのセグメントを使い分けられるかどうかが大きな違いになる。一般的なテレアポの手法をそのまま持ち込むと、どちらのセグメントにも刺さらない結果になりやすい。事前に確認すべき一次情報としては、直近の調剤報酬改定の内容、対象薬局が門前としている医療機関の診療科目や処方傾向、対人業務シフトに関する厚生労働省の公開情報などが基本になる。

30分無料相談 →