2026.07.28

ホテル・宿泊施設の新規開拓が伸びない理由|営業代行を活かす進め方

「総支配人には興味を持ってもらえたのに、本部の稟議で止まってしまった」「繁忙期に差し掛かった途端、まったく連絡が取れなくなった」——PMSやOTA連携ツール、省人化設備、清掃・DX関連のサービスをホテル・旅館に売り込もうとする企業から、こうした声が寄せられることは珍しくない。宿泊施設という顧客セグメントは、決裁の仕組みも接触できる時期も一般的な法人営業とは異なり、ホテル 営業代行という選択肢を検討する企業が増えている背景には、この特有の難しさを自社の営業体制だけで越えるのが容易ではないという事情がある。

営業代行に頼めば取れる、という単純な話ではない。外部に任せる前に整理すべき前提がある。ホテル・旅館という顧客がどのような構造的な壁を持ち、その壁を踏まえてどう提案を設計し、どのタイミングでどのチャネルから接触するのが妥当なのか。営業代行を使う場合に何を基準に選び、どこで失敗しやすいのか。この記事ではその一連の論点を順番に整理する。

執筆しているのは、食品・卸、ヘルスケア、ホテル向けサービスなど事業成長を求めるBtoB企業を中心に300社以上の営業支援を行ってきた株式会社START WITH WHYである。宿泊業専門の営業組織ではないが、決裁の分散・季節による営業可能時期の制約・現場が電話より対面や紹介を重視するという、宿泊業特有の壁と共通する構造を他業種でも数多く扱ってきた立場から、この記事を書いている。


ホテル開拓の営業が直面する構造課題

ホテル・旅館という顧客セグメントを新規開拓する際、真っ先にぶつかるのは決裁権の所在と、営業をかけられる時期が限られているという2つの制約である。

課題1. 総支配人と本部・オーナーに分かれる決裁構造

現場を預かる総支配人が導入に前向きでも、最終的な予算執行権限は本部や運営会社、あるいはオーナー側にあることが多い。現場の合意と本部の決裁は別物であり、総支配人止まりの提案は、稟議の段階で止まってしまうことが少なくない。チェーン系であればさらに本部の投資判断基準に沿った説明が必要になり、独立系であればオーナーの個人的な意向が強く反映される傾向がある。

課題2. 季節繁閑による営業可能時期の制約

観光地・温泉地を中心に繁忙期と閑散期の差が大きく、繁忙期には現場が新規の商談にほぼ対応できない状態になる。ゴールデンウィークや夏季、年末年始といった稼働率の高い時期に接触を試みても、現場の反応は得にくい。営業可能な時期が実質的に限られているという前提を持たずに年間の稼働を組むと、機会の多くを取りこぼすことになる。

課題3. 対面・紹介を重視する現場文化

宿泊業界は横のつながりが強く、電話やメールだけの新規アプローチよりも、業界内の紹介や展示会・商談会での対面接点の方が信頼を得やすい傾向がある。電話一本での初回接触は他業種以上に反応率が低くなりやすく、対面機会をどう組み合わせるかが接触設計上の課題になる。


ホテルへの提案・アプローチで押さえるべきフレーム

構造課題を踏まえたうえで、いつ・誰に・何を軸に提案するかを組み立てる必要がある。

フレーム1. 閑散期に合わせた接触設計

繁忙期を避け、比較的現場に余裕のある閑散期にまとまった商談機会を設定することが基本になる。年間の稼働率カレンダーを事前に把握し、施設ごとの繁忙期を踏まえてアプローチの時期を調整することで、無駄な架電・訪問を減らせる。

フレーム2. インバウンド回復・人手不足を起点にした訴求

インバウンド需要の回復や慢性的な人手不足を背景に、省人化投資やDX投資が購買トリガーになりやすい局面が続いているとされる。総支配人には現場の業務負荷軽減、本部には投資対効果や人件費削減という、役割ごとに異なる切り口で同じ投資判断を後押しする設計が有効になる。

フレーム3. チェーンと独立系で分かれる攻め方

チェーン系ホテルは本部への提案が通れば複数施設への横展開が見込める一方、本部の投資判断基準や既存ベンダーとの比較検討を経る必要がある。独立系・個人経営に近い旅館では、総支配人やオーナー本人との関係構築が意思決定に直結しやすい。同じ「宿泊施設」でも攻め方を分けて設計する必要がある。

観点 チェーン系ホテル 独立系ホテル・旅館
決裁の所在 本部・運営会社 オーナー・総支配人本人
検討スピード 本部の投資判断プロセスに準ずる 現場の判断で比較的早い
横展開の可能性 複数施設への同時展開が見込める 施設単位での個別対応が中心
重視される情報 投資対効果・他チェーンでの導入実績 現場の負荷軽減・紹介実績

具体的なアプローチ実例

ターゲットの規模と決裁構造によって、有効なアプローチは異なる。ここではチェーン本部向けと、独立系施設への直接アプローチの2つに分けて整理する。

チェーン本部・運営会社への提案

複数施設を統括する本部やホテル運営会社が窓口になる場合、施設単位の個別提案ではなく複数施設への横展開を前提にした投資対効果の説明が求められる。本部担当者は既存ベンダーとの比較や、他チェーンでの導入実績を判断材料にすることが多く、初回接触では現場の課題感よりも数値で語れる効果を前面に出した方が検討が進みやすい。

独立系ホテル・旅館への直接アプローチ

独立系の施設では総支配人やオーナーへの直接的な関係構築が鍵になる。閑散期を狙った電話でのアプローチに加え、業界内の紹介や商談会での対面接点を組み合わせることで反応率が上がる傾向がある。繁忙期を避けたタイミング設計と、対面機会の確保が独立系攻略の軸になる。当社が上位クラスのホテル・旅行事業者向けにアウトバウンド支援を行った際は、ターゲットの絞り込みと接触時期の調整によって、商談化率10%を確保できたケースもあった。


ホテル開拓で営業代行を活用する場合の選定基準

宿泊業という特殊な顧客セグメントを外部に任せる際、一般的な評価軸だけで代行会社を選ぶと期待した成果につながりにくい。

選定基準1. 決裁構造への理解と使い分け

チェーン本部向けと独立系向けで訴求軸もトークも変える必要がある。総支配人・本部・オーナーという決裁関与者の違いを踏まえたスクリプト設計ができるかを確認したい。

選定基準2. 繁閑カレンダーに合わせた稼働調整力

年間を通じて一律のペースでアプローチを続けるのではなく、繁忙期は稼働を抑え、閑散期に集中させるといった季節性を踏まえた稼働配分ができるかは実務上重要な確認事項になる。

選定基準3. 対面・紹介チャネルとの組み合わせ提案力

電話・メールだけに依存せず、業界内の紹介や展示会・商談会といった対面接点との組み合わせを提案できる代行会社かどうかも見ておきたい。電話一本で完結させようとする代行会社は、宿泊業では反応率が伸びにくい傾向がある。

選定基準4. インバウンド・人手不足という購買トリガーの理解

現在の宿泊業界特有の投資動向を理解した上で、訴求のタイミングと切り口を設計できるかどうかも選定基準になる。業界動向を踏まえない一般論だけのトークでは、現場の実感との乖離が生まれやすい。


失敗事例から学ぶ事前確認ポイント

ホテル・旅館への新規開拓でよく見られる失敗パターンには、共通する傾向がある。

失敗パターン1. 繁忙期にアプローチを継続してしまう

稼働率の高い時期に架電・訪問を続けても現場の対応は期待できず、むしろ悪印象につながるリスクがある。施設ごとの繁忙期を事前に把握せず一律のスケジュールで動くと、機会損失だけでなく関係構築の機会も損ないやすい。

失敗パターン2. 総支配人止まりで本部決裁を見落とす

現場の総支配人との関係構築に手応えを感じても、本部の投資判断プロセスを把握していなければ、そこで提案が止まる。誰の稟議・承認まで必要かを初期段階で確認しておく必要がある。

失敗パターン3. チェーンと独立系を同じトークで攻めてしまう

本部への投資対効果訴求をそのまま独立系のオーナーに当てはめても響きにくく、逆に独立系向けの現場感重視のトークをチェーン本部に持ち込んでも判断材料にならない。ターゲット区分ごとに台本を分けているかは事前に確認しておきたい。

失敗パターン4. 電話のみに依存し対面機会を作らない

宿泊業界は紹介や対面接点への信頼が厚く、電話・メールのみのアプローチでは初期の信頼獲得に時間がかかる。展示会や商談会、業界内の紹介ルートをどう組み合わせるかを設計しないまま架電数だけを追うと、数をこなしても商談化に結びつきにくい。


まとめ:ホテル開拓を機能させるために整えるべきこと

ホテル・旅館という顧客セグメントの新規開拓は、決裁の分散・季節による営業可能時期の制約・対面や紹介を重視する現場文化という構造を前提に設計しないと、稼働をかけても成果につながりにくい。整理すると、押さえるべき論点は次の通りになる。

  • 繁閑カレンダーを把握し、閑散期に接触を集中させる
  • 総支配人・本部・オーナーそれぞれに響く訴求軸を用意する
  • チェーン系と独立系で購買プロセスが異なることを前提に台本を分ける
  • 電話・メールだけに頼らず、対面・紹介チャネルを組み合わせる
  • インバウンド回復・人手不足という業界共通の購買トリガーを踏まえる

これらを自社だけで整えるのが難しい場合、営業代行という外部リソースの活用も選択肢になる。ただし宿泊業特有の決裁構造や季節性を理解しないまま量をこなす代行会社に依頼しても、期待した成果は得にくい。宿泊施設の意思決定構造と繁閑サイクルを理解しているかどうかを、選定の最初の基準に置くことが望ましい。


よくある質問

Q. ホテルへの営業代行はいつ稼働を始めるのが効果的ですか。

対象施設の繁忙期を避けた閑散期に接触を集中させるのが基本になる。年間を通じて一律のペースで動くのではなく、施設ごとの稼働率カレンダーを踏まえてアプローチの山を作ることが望ましい。

Q. チェーン系と独立系、どちらの方が営業代行に向いていますか。

一概にどちらが向いているとは言えない。チェーン系は本部の投資判断プロセスへの理解、独立系はオーナー・総支配人との直接的な関係構築が鍵になる。ターゲットに応じて訴求軸とアプローチ方法を分けられるかどうかが重要になる。

Q. 電話でのアプローチだけでは難しいでしょうか。

電話単独での初回接触は反応率が伸びにくい傾向がある。業界内の紹介や展示会・商談会での対面接点と組み合わせることで、信頼獲得のスピードが上がりやすいとされる。

Q. 繁忙期にどうしても提案したい場合はどうすればよいですか。

繁忙期は現場対応が最優先になるため、詳細な商談ではなく、次の閑散期に向けた情報提供や関係構築にとどめておく方が現実的とされる。無理に商談化を急ぐと、かえって印象を損なう場合がある。

Q. 営業代行に依頼する場合、自社ではどこまで準備しておくべきですか。

ターゲットとなる施設区分(チェーン系/独立系)と、決裁関与者の想定、対象施設の繁閑サイクルは自社側で整理しておくことが望ましい。この前提が曖昧なまま代行会社に任せると、稼働の配分やトーク設計の精度が上がりにくい。

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