2026.08.27
営業戦略の全体設計|戦略・計画・実行・改善の4段で施策を一本につなぐ
営業ノウハウ
新しい営業施策を足しているのに、売上の伸び方が変わらない。ウェビナーもやった、広告も出した、アウトバウンドも始めた。それでも「何が効いているのか」を聞かれると誰も即答できない――営業組織を立ち上げる段階の企業で、最も頻繁に起きる詰まり方です。
- 施策は増えているが、どれを続けてどれをやめるか判断できない
- ターゲットの定義が担当者ごとに微妙に違う
- KGIは決まっているが、日々の行動指標とつながっていない
- どの段階で商談が落ちているかが見えていない
- 担当が変わると、営業のやり方がゼロから作り直しになる
これらは個別の施策の巧拙ではなく、施策の前段にある「全体設計」が欠けていることから生じます。この記事では、営業・マーケティングの打ち手を一本の線でつなぐための全体地図の作り方を、自社に当てはめて書けるかたちで整理します。
施策を足すほど、努力が分散する構造
営業組織の立ち上げ期に施策が増えるのは、それ自体は自然なことです。問題は、それぞれの施策が「何のためにあるか」を上流から説明できない状態で並んでいることにあります。
たとえばウェビナーを開催したとします。目的が「認知の獲得」なのか「既存リードの温度上げ」なのか「新規商談の創出」なのかで、集めるべき参加者も、当日の内容も、終了後のフォローも変わります。目的が定まらないまま実施すると、参加者数という測りやすい数字だけが残り、それが売上にどう効いたかは検証できません。
こうした施策が3つ4つ並ぶと、リソースは分散し、それぞれが中途半端な結果に留まります。担当者は忙しく動いているのに、事業としては前に進んでいない。この状態を抜けるには、施策単位ではなく流れ全体を設計し直す必要があります。
全体設計を持つと変わる3つのこと
- 施策がブレなくなる:全体像があるから、次に何をやるかの優先順位が自動的に決まる
- 資源が集中する:どこに・どの順で・どう使うかが明確になり、薄く広く配ることがなくなる
- 再現できるようになる:属人的な勘ではなく、仕組みとして積み上がっていく
営業・マーケの戦略は「4段」で回る
全体設計は、戦略・計画・実行・改善の4段で捉えるとシンプルになります。ポイントは、各段のアウトプットが次の段の入力になっているという関係です。前の段が空白のまま次に進むと、その先はすべて根拠のない作業になります。

1. 戦略|誰に・何で勝つか
最初の段では、狙う市場と勝ち筋を決めます。アウトプットは「誰に、何を、なぜ自社から買うのか」を1文で言い切れる状態です。
この1文が長くなったり、複数のパターンが並列で出てきたりする場合は、まだ絞り込みが足りていません。「首都圏の中堅製造業に、実装まで伴走する営業支援を、内製にはない実装力で提供する」というくらいの粒度まで落とします。
2. 計画|ターゲットとKPIを設計する
戦略で決めた勝ち筋を、数字と対象企業に翻訳する段です。アウトプットはICP(理想顧客像)とターゲットアカウントリスト、そしてKGIから分解したKPIと予算配分になります。
ここで大事なのは、KGIをそのままKPIにしないことです。「年間受注36件」はKGIであってKPIではありません。受注36件を月3件に割り、受注率20%なら月商談15件、商談化率が10%なら月150社への有効接触が必要――というように、明日から追いかけられる行動の単位まで分解します。
3. 実行|チャネルを組み合わせて動かす
計画で決めた対象に、実際にアプローチする段です。アウトバウンド、広告、ウェビナー、紹介、商談といった打ち手をどう組み合わせるかを決めます。
実行段階でよく起きるのは、単一チャネル単発接触への依存です。1回の電話や1通のメールで判断されるより、複数の接点を計画的に重ねたほうが反応は安定します。「どのチャネルを、どの順で、何回接触するか」まで決めておくと、実行が個人の裁量に依存しなくなります。
4. 改善|歩留まりの弱い段を直す
最後は、実行の結果を数字で点検する段です。アウトプットは段階別の歩留まり分析と、週次で回る改善サイクルです。
ここで見るべきは全体の合計ではなく、段ごとの通過率です。接触から一次反応、一次反応から商談、商談から受注。それぞれの通過率を並べれば、どこが最も弱いかは一目でわかります。改善は、最も弱い1段に絞って手を入れるのが原則です。
選択と集中を、3つの問いに分解する
事業戦略は突き詰めると「限られたヒト・モノ・カネを、どこに・どの順番で・どう使うか」を決める作業です。この3つを分けて考えると、判断がしやすくなります。
どこに|勝てる土俵を選ぶ
市場規模、競合状況、自社の実績、到達しやすさといった観点で候補を評価し、絞り込みます。判断基準は「大きい市場かどうか」ではなく「自社が1位を取れる土俵かどうか」です。ニッチであっても、そこで指名される状態を作れるなら、その後の営業効率は大きく変わります。
絞り込みの精度を上げる材料は、既存顧客の中にあります。成果が出ている顧客に共通する業種・規模・組織状況・導入時の状態を洗い出すと、狙うべき像が具体的に見えてきます。
どの順番で|効くものから着手する
すべての施策を同時に立ち上げることはできません。インパクトの大きさと実現の早さの2軸で並べ替え、上から着手します。
立ち上げ期であれば、既存顧客からの紹介のように、すでに信頼関係がある経路から手をつけるのが合理的なことが多いです。そこで得た反応や言葉を、次のアウトバウンドのメッセージに転用できるためです。逆に、成果が出るまでに時間がかかる施策を最初に置くと、検証が終わる前に資金と気力が尽きます。
どう使うか|資源配分を数字で握る
人・予算・時間の配分をKPIに紐づけ、月次で見直せる状態にします。「なんとなく全部やる」から「この配分でこの数字を狙う」に変えることで、投資判断が可能になります。
外部リソースを使う場合も同じです。参考までに、営業代行・営業支援を外部に委託する場合の一般的な相場は、固定報酬型で月額30〜150万円/人(実務中心なら月額50〜70万円/人、戦略設計から入る場合は80〜150万円/人)、成果報酬型でアポイント1件あたり1〜5万円が目安になります。この金額を「月にいくら払うか」ではなく「その配分で何件の商談を狙うか」に変換できているかが、判断の分かれ目です。
全体設計がないと起きる4つの詰まりと処方箋
現場で頻繁に見る詰まり方は、大きく4パターンに整理できます。いずれも原因は上流の欠落にあるため、直し方もセットで決まります。
| 詰まり方 | 現場で起きていること | 処方箋 |
|---|---|---|
| 施策が場当たりになる | 流行りの手法を単発で足していく | 全体地図を先に描き、そこから優先順位を決める |
| ターゲットが曖昧 | 「中小企業向け」など、誰にも当てはまる定義で止まっている | ICPとコアターゲットを、業種・規模・状況で名指しできるまで定義する |
| 数字がつながらない | KGIはあるが、日々の行動指標と分断している | KGIを行動指標まで分解し、各段の必要数を逆算する |
| 改善が回らない | 結果の良し悪ししか見えず、どこで落ちているかわからない | 段ごとの歩留まりを可視化し、最も弱い1段に絞って手を入れる |
4つとも、症状が出るのは実行フェーズですが、原因は戦略・計画フェーズにあります。実行を頑張って直そうとするほど疲弊するのは、このずれが理由です。
1社に当てはめると、どう埋まるか
抽象論で終わらせないために、具体例で4段を埋めてみます。ここでは「首都圏の中堅製造業を狙う、営業組織立ち上げ期の企業」を想定します。
- 戦略:首都圏の中堅製造業に、実装まで伴走する営業支援を、内製にはない実装力で提供する
- 計画:ICP=年商50〜300億円・営業組織の立ち上げ期/KGI=月間受注3件/KPI=月商談30件・受注率20%・平均単価80万円
- 実行:選定した150社にアウトバウンドで複数チャネル7接点。並行して事例ウェビナーを実施。商談はフィールドセールスが対応し、受注後はカスタマーサクセスへ引き継ぐ
- 改善:接触初期の反応率と商談化率を毎週点検し、最も弱い段(例:一次接触率)を重点的に直す
ここまで書けると、たとえば「広告を出すべきか」という問いに対して、「今のボトルネックは一次接触率だから、広告より先にトークの切り口を変える」という答えが自動的に出てきます。全体地図の価値は、こうした個別判断の速さと一貫性に表れます。
まずは1枚に書き出すところから
いきなり完璧な設計を目指す必要はありません。4段それぞれについて、いま自社が答えられることを1文ずつ書き出すところから始めます。書けない段が出てきたら、そこが最優先で埋めるべき空白です。
書き出したものは、営業メンバーと共有して認識のずれを確認します。同じ会社にいても、「誰に売っているか」の答えが人によって違うことは珍しくありません。そのずれを可視化するだけでも、全体設計の第一歩としては十分な価値があります。
まとめ
- 施策を足すほど成果が分散するのは、施策の巧拙ではなく全体設計の欠落が原因
- 営業・マーケの戦略は、戦略→計画→実行→改善の4段でつながっている。各段のアウトプットが次段の入力になる
- 選択と集中は「どこに・どの順番で・どう使うか」の3つに分解すると判断しやすい
- 現場の詰まりは4パターンに整理でき、いずれも上流を直すことで解消に向かう
- 抽象で終えず、自社の言葉で4段を1文ずつ埋めてみることが出発点になる
この記事は、株式会社START WITH WHYが公開している「設計で勝つ営業」シリーズの Vol.1「戦略の全体設計」をもとに構成しています。
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