2026.05.01
Revenue Operations(RevOps)入門|営業・マーケ・CSを横断する新潮流
コラム
RevOpsって何?要するに「営業とマーケがバラバラな状態」を直す話
営業部はExcelで案件管理、マーケ担当はメール配信ツールに顧客リストを入れていて、カスタマーサクセスはまた別の問い合わせ管理表を使っている。3つの部門がそれぞれ別のデータを持ち、別のKPIを追い、別の会議で別の話をしている。よくある光景です。
この「バラバラ」が売上の伸びを止めている原因だとしたら、どうでしょうか。
RevOps(Revenue Operations、レベニューオペレーション)は、この分断を仕組みで解消する考え方です。営業・マーケ・CSが使うツール、見ているデータ、追っている数字を一本に揃え、「リード獲得から受注、継続利用」までを全員で一つの線としてつなぐ。2019年頃に米国のSaaS企業から広がり、今は業種を問わず導入が進んでいます。
横文字で身構える必要はありません。社長が頭の中でやっている「あの案件どうなった?」「マーケから来たリード、ちゃんと追ってる?」という確認作業を、属人的な記憶ではなく仕組みに置き換える。それがRevOpsの本質です。
なぜ今、注目されているのか
BtoB企業を例にとると、見込み客はWebやSNSで情報を集め、問い合わせ後に営業担当と商談し、契約後はCS担当とやり取りします。部門が替わるたびに「状況をもう一度教えてください」と聞かれる。顧客からすれば「さっき話したのに」という体験です。マーケが苦労して集めたリードを営業が3日放置していた、営業が握った要望がCSに伝わっていなかった――こうしたロスは、部門間の情報が切れているから起きます。RevOpsはこの構造を直す手段として生まれました。
BEFORE
サイロ型組織
マーケ
営業
CS
データ・KPI・ツールがバラバラ
AFTER
RevOps型組織
マーケ
営業
CS
共通データ・共通KPI・統合ツール
従来の「サイロ型」とRevOps型、何がどう変わるのか?
| 比較項目 | 従来型(サイロ型) | RevOps型 |
|---|---|---|
| 情報共有 | 部門ごとにスプレッドシートやツールが別々。共有は口頭・メールベース | 全部門が同じデータ基盤を参照。顧客情報は一元管理 |
| KPI設計 | マーケはリード数、営業は受注数、CSは継続率。それぞれ別方向を向いている | 収益に直結する共通KPIを設定し、部門間の数字が連動 |
| ツール運用 | 部門ごとに導入。連携なし、重複投資が発生しやすい | 全体最適で選定・統合。データが自動で流れる |
| 意思決定 | 部門会議→部門長→経営会議と段階を踏むため遅い | 共通ダッシュボードで状況を即時把握。判断が早い |
| 顧客体験 | 担当が変わるたびに同じ説明を求められる | 顧客情報が引き継がれ、一貫した対応ができる |
「うちは社長が全部見てるから大丈夫」と思う方もいるかもしれません。社員5人ならそれで回ります。ただ、10人、20人と増えていくと、社長の頭の中にしかない情報がボトルネックになる。RevOpsは「社長の頭の中」を仕組みとして組織に落とし込む作業でもあります。
RevOpsを入れると、実際に何が良くなるのか?
売上成長率が上がる
Forrester Consultingが2021年にClari委託で実施した調査 “The Revenue Operations And Intelligence Opportunity” では、RevOps導入企業は未導入企業に比べて収益成長率が最大36%高いという結果が出ています。大企業中心の調査ですが、中小企業でも原理は変わりません。マーケが月200件のリードを集めていても、営業への引き継ぎで30%がこぼれ落ちていたら、60件分の商談機会を捨てていることになる。この取りこぼしを減らすだけでも、売上への影響は大きいはずです。
「あの人がいないと回らない」がなくなる
RevOps導入の過程で、各部門の業務フローやデータの流れを棚卸しします。この作業自体が属人化の解消につながります。ベテラン営業が急に辞めたとき、その人の頭の中にしかなかった顧客情報や商談の経緯が丸ごと消える――中小企業にとってはこれが一番怖いリスクです。データと業務フローが整理されていれば、引き継ぎにかかる時間は劇的に短くなります。
経営判断が「勘」から「数字」に変わる
Boston Consulting Groupが2022年に発表したレポート “The New Revenue Growth Engine” によると、RevOpsチームを持つ企業の83%が「データに基づいた意思決定ができるようになった」と回答しています。「今月の見込み案件がいくらあるか」「どのチャネルからのリードが受注率が高いか」。これらに感覚ではなく数字で答えられるようになると、採用や広告への投資判断の精度が変わります。
中小企業がRevOpsを始めるには、何からやればいい?
「考え方はわかった。で、明日から何をすればいいの?」という方のために、無理なく始められる5ステップを紹介します。
ステップ1:営業とマーケの週次ミーティングを始める
最初にやるべきことは、ツール導入でも組織改編でもありません。営業担当とマーケ担当(兼任でもOK)が週1回、30分だけ話す場をつくることです。議題は「今週どんなリードが来たか」「リードの質はどうだったか」「営業側で困っていることはないか」の3つだけ。たとえば「展示会経由のリードは担当者レベルが多くて決裁者に届かない」といった声が出れば、マーケ側のターゲティングを見直すきっかけになります。この小さな習慣が、部門の壁を崩す第一歩です。
ステップ2:顧客データを一箇所にまとめる
営業のExcel、マーケのメール配信リスト、CSの問い合わせ管理表。バラバラに散らばっている顧客情報を一つにまとめます。高価なCRMは不要です。Googleスプレッドシートで十分なので、「誰が・いつ・どの段階にいるか」を全員が見られる状態をつくること。完璧を目指すと止まるので、まずは「名前・会社名・ステータス・最終接触日」の4列から始めてください。
ステップ3:共通KPIを1つだけ決める
マーケはリード数を追い、営業は受注件数を追い、CSは解約率を追っている。それぞれ正しいのですが、優先順位がぶつかる場面が出てきます。まずは部門横断の共通KPIを1つだけ設定しましょう。「月次の新規受注金額」や「リードから受注までの平均日数」など、全員が同じ方向を向ける指標を選ぶのがコツです。
ステップ4:顧客の流れを図にする
ホワイトボードでもノートでも構いません。「リード獲得→初回接触→商談→見積→受注→オンボーディング→継続」という流れを書き出して、各段階で誰が何をしているかを整理します。ある食品卸の会社では、この作業をやっただけで「見積後のフォロー電話を誰もしていなかった」という穴が見つかりました。図にすると、口頭では気づけない引き継ぎの断絶が浮き彫りになります。
ステップ5:ツールの統合は最後に
ステップ1〜4が回り始めてから、はじめてツール選定に入ります。中小企業であれば、CRM(HubSpot無料版など)とGoogleスプレッドシートの組み合わせで十分RevOps的な運用は可能です。「ツールを入れれば解決する」という順番で進めると、設定に追われて運用が形骸化しがちです。仕組みが先、ツールは後。この順番だけは守ってください。
RevOps導入でやりがちな失敗とは?
RevOpsは正しく進めれば成果が出ますが、やり方を間違えると現場が混乱するだけで終わります。よくある失敗を5つ挙げます。
いきなり高額ツールに手を出す
「RevOpsにはCRMが必須」と聞いて、運用設計も固まらないまま月額数十万円のツールを契約するパターンです。機能が多すぎて入力項目が膨大になり、現場が入力をサボり始め、データが溜まらず、結局「高い管理画面を眺めるだけ」になる。まずは無料ツールか既存のスプレッドシートで3か月回してから検討しても遅くありません。
トップダウンだけで走る
社長が「来月からRevOpsやるぞ」と宣言しても、現場の営業担当が「で、何が変わるんですか?」と冷めていたら定着しません。「なぜ部門をまたぐ必要があるのか」「それで自分の仕事がどう楽になるのか」。この2点を具体的に伝えないと、新しい会議が増えただけ、という結果になります。
KPIを盛りすぎる
連携が始まると、あれもこれも測りたくなります。気づけばKPIが15個。週次MTGで全部レビューしようとすると2時間かかり、誰も集中できない。最初は共通KPI1〜2個に絞って、運用が安定してから項目を足すのが現実的です。
データ入力を「お願い」で済ませる
RevOpsの土台はデータですが、忙しい営業担当に「商談のたびにCRMへ入力してください」と頼むだけでは後回しにされます。入力項目を最小限に削る、日報の代わりにする、自分の成績ダッシュボードにリアルタイム反映する――「入力すると自分が得する」設計にしないと続きません。
1か月で成果を求める
RevOpsは組織の動き方を変える取り組みです。1〜2か月で売上が跳ねることを期待すると、成果が見えない焦りから「やっぱり意味なかった」と打ち切ってしまう。3〜6か月を目安に、「部門間のコミュニケーションが増えた」「リードの引き継ぎが早くなった」という定性的な変化をまず実感できれば、順調です。
「うちは中小だから関係ない」は本当か?
RevOpsと聞くと「大企業やIT企業の話でしょ」と感じるかもしれません。発祥は確かに米国のテック企業です。ただ、本質は「部門間の壁をなくして売上を最大化する」というシンプルな話で、会社の規模は関係ありません。
むしろ中小企業のほうが有利な面もあります。部門間の距離が近い、意思決定が早い、社長が直接声をかけられる。大企業が組織図の壁に苦しんでいるところを、中小企業ならスキップできる。このアドバンテージを活かさない手はないはずです。
完璧な体制を一気につくる必要はありません。週次ミーティング、データの一元管理、共通KPIの設定。この3つだけ半年続ければ、営業組織の動き方は確実に変わります。
RevOpsについてよくある質問
RevOpsの専任担当者を置く必要がありますか?
中小企業の場合、最初から専任を置く必要はありません。まずは営業マネージャーや経営企画の担当者が兼任で旗振り役を担い、週次MTGのファシリテーションとデータの取りまとめを行えば十分です。事業規模が拡大して管理工数が増えてきた段階で専任化を検討してください。
CRMを導入していなくてもRevOpsは始められますか?
始められます。RevOpsの本質はツールではなく「部門間の連携の仕組み」です。Googleスプレッドシートで顧客リストを一元管理し、週次MTGでリードの引き継ぎ状況を確認するだけでも、RevOps的な運用の第一歩になります。CRMの導入は、運用が回り始めてから検討すれば十分です。
BtoB以外の業種でもRevOpsは使えますか?
使えます。RevOpsの考え方はBtoB SaaSから広まりましたが、「顧客との接点が複数部門にまたがっている」会社であれば業種を問わず有効です。たとえば、集客はWeb広告(マーケ)、接客は店舗スタッフ(営業)、アフターフォローはコールセンター(CS)という流れがある業態なら、RevOpsの枠組みがそのまま当てはまります。
効果が出るまでどれくらいかかりますか?
定性的な変化(部門間の情報共有がスムーズになった、リードの放置が減ったなど)は1〜3か月で感じられることが多いです。売上数値への反映は3〜6か月が目安です。組織の仕組みを変える取り組みなので、短期的な数字だけで判断せず、まずは「コミュニケーションの質が変わったかどうか」を基準にしてください。
RevOpsとSalesOps(セールスオペレーション)の違いは?
SalesOpsは営業部門の業務効率化に特化した考え方で、対象は営業プロセスに限られます。一方、RevOpsは営業だけでなくマーケティングとカスタマーサクセスも含め、収益に関わる部門全体を横断的に最適化します。SalesOpsが「営業部の改善」なら、RevOpsは「売上に関わる全部門の連携改善」です。
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