2026.08.07
物流会社の新規開拓が続かない理由|運送・物流に効く営業代行とは
業界別ガイド
「電話をしても、社長は運行管理で手一杯で捕まらない。ようやく話せても、価格の話ですぐ終わってしまう」――運送会社・物流会社を新規開拓しようとする営業担当から、こうした声を聞くことは少なくない。物流業界は中小規模の運送会社が大半を占め、他業種とは異なる意思決定構造と商習慣を持つ。配車・運行管理システム、車両、燃料関連サービス、物流人材、DXツール、2024年問題への対応サービスなど、物流会社に商材を届けたい企業にとって、この壁をどう越えるかは事業成長を左右するテーマになる。ここでは物流会社 営業代行という切り口から、運送会社・物流会社という顧客セグメントを新規開拓する際の構造的な難しさと、実務で機能する提案設計を整理する。
営業代行に頼めば取れる、という単純な話ではない。外部に任せる前に整理すべき前提がある。物流会社の決裁構造はどうなっているのか、IT・DX投資への姿勢はどうか、価格に対する感度はどれほどシビアか、口コミや業界団体がどう影響するのか。こうした業種固有の壁を理解しないまま営業代行に丸投げしても、架電数だけが積み上がって商談化しないという事態に陥りやすい。本稿では、物流会社を開拓する側が押さえるべき論点を、構造課題・提案フレーム・アプローチ実例・代行会社の選定基準・失敗パターンという順で整理する。
執筆しているのは、食品・卸、ヘルスケア、ホテル向けサービスなど事業成長を求めるBtoB企業を中心に300社以上の営業支援・営業代行を手がけてきた株式会社START WITH WHYである。物流業界専門の会社ではないが、「経営者が現場業務を兼務し、決裁までの時間が限られ、投資判断に保守的な文化がある」という構造は、食品卸や中小の製造業など当社が向き合ってきた業種と共通する点が多い。物流会社ならではの固有事情を踏まえつつ、業種を横断して見えてきた新規開拓の考え方という視点から書いている。
物流会社開拓の営業が直面する構造課題
物流会社への新規開拓が難しいと感じる背景には、業種特有の構造がいくつか重なっている。代表的な3つを整理する。
課題1: 決裁者が現場を兼務し接触時間が限られる
物流業界は中小の運送会社が大半を占め、社長自身が配車・運行管理などの現場業務を兼務しているケースが多い。日中は運行対応や荷主とのやり取りに追われ、営業電話への対応どころではない時間帯が長く続く。夕方以降や早朝など、比較的落ち着く時間帯を狙わなければ、決裁者本人と話す機会自体が生まれにくい。決裁者=現場責任者という構造を前提にしないまま一般的な架電の型を当てはめると、取り次ぎの段階でつまずきやすい。
課題2: IT・DX投資に対する保守的な姿勢
中小の運送会社では、IT・DX投資に対して保守的な判断をする文化が根強いとされる。過去にシステム導入で期待した効果が得られなかった経験や、そもそも投資対効果を測る仕組みが社内にないことなどが背景にあると考えられる。新しい商材を提案しても「今のやり方で回っているから」という理由で検討自体が始まらないことも珍しくない。保守的な意思決定の背景を理解しないまま最新機能を訴求する提案は響きにくい。加えて、現場のドライバーや配車担当がITツールの操作に不慣れなことも多く、「導入しても現場が使いこなせないのではないか」という不安が、検討を先送りにする理由として重なっていることも少なくない。
課題3: 価格への感度が極めてシビアな業界構造
物流業界は多重下請け構造や燃料費高騰の影響もあり、利益率が薄いとされる会社が多い。そのため、商材の価格に対する感度は他業種と比べても際立って高く、機能やメリットを丁寧に説明しても、最終的には価格の話に収束しやすい。価格だけで比較されると差別化が難しくなるため、投資対効果や回収期間を具体的に示せるかどうかが商談の分かれ目になる。
物流会社への提案・アプローチで押さえるべきフレーム
構造課題を踏まえたうえで、実際の提案・アプローチ設計ではどこに重心を置くべきかを整理する。
2024年問題を起点に会話を組み立てる
物流業界における近年最大の購買トリガーは、時間外労働の規制強化に伴ういわゆる2024年問題と、それに連動するドライバー不足、燃料高への対応にあるとされる。配車・運行管理の効率化、労働時間の可視化、人材確保に関わる商材であれば、この文脈で会話を始めると、業界の切実な関心事に自然に接続しやすい。規制対応という共通の危機感を起点にした会話は、保守的な会社であっても検討のテーブルに乗りやすい。
口コミ・業界団体を意識した信頼構築
物流業界は地域や業界団体を通じたつながりが強く、同業他社の評判や導入事例が意思決定に大きく影響するとされる。初めて接触する会社にいきなり大型の提案をするより、業界団体のイベントや勉強会での接点、同業からの紹介を経由したアプローチの方が警戒感を下げやすい。テレアポやメールだけに頼らず、業界内の信頼のネットワークを意識したチャネル設計が有効になる。同業他社での導入実績を具体的に語れると、初対面での警戒感を下げる材料になりやすい。
価格とROIを明確に示す提案設計
価格感度が高い業界であることを踏まえると、提案の初期段階から投資対効果や回収期間の目安を具体的に示すことが重要になる。抽象的な「効率化できます」という説明ではなく、燃料費・人件費・残業代といった具体的なコスト項目に対して、どの程度の削減が見込めるかを数字の構造で示せると、価格への納得感を得やすい。価格の話に入る前にROIの土台を作っておくことが、値引き交渉一辺倒になることを防ぐ。
具体的なアプローチ実例
物流会社は規模によって望ましいアプローチの重心が異なる。中小・地場運送会社向けと、中堅・大手物流会社向けの2パターンに分けて整理する。
中小・地場運送会社向けアプローチ
保有車両数が少なく、社長が現場業務を兼務する中小・地場の運送会社では、経営者本人と直接話せるかどうかがすべてを左右する。日中の運行対応が落ち着く時間帯を狙った架電、あるいは業界団体の集まりを介した紹介経由でのアプローチが機能しやすい。投資規模は大きくないことが多いが、その分、経営者が「良い」と判断すればその場で導入が決まることもあり、意思決定のスピードは速い。価格への感度が高いため、初期費用を抑えたスモールスタートの提案が受け入れられやすい傾向にある。
中堅・大手物流会社向けアプローチ
複数拠点や多数の車両を抱える中堅・大手の物流会社では、運行管理部門や情報システム部門など、専門の担当部署が窓口になることが多い。この層には、コスト削減効果を定量的に示す資料や、他拠点への展開余地を含めた提案が有効になる。決裁プロセスは中小の運送会社より複雑になりやすいが、投資規模も大きくなるため、稟議を通すための材料を丁寧に用意する価値がある。以下に、両者のアプローチの違いを整理する。
| 観点 | 中小・地場運送会社 | 中堅・大手物流会社 |
|---|---|---|
| 主な決裁者 | 社長(現場業務を兼務) | 運行管理部門・情報システム部門 |
| 価格感度 | 非常に高く即断で見送られやすい | ROI次第で許容されやすい |
| 提案の重心 | 初期費用を抑えたスモールスタート | 定量的なコスト削減効果と展開余地 |
| 有効なチャネル | 業界団体・同業紹介経由 | 担当部署への直接提案 |
物流会社開拓で営業代行を活用する場合の選定基準
物流業界という業種特性を踏まえたうえで、営業代行を活用するのであれば、以下の観点で選定することが望ましい。
選定基準1: 2024年問題など業界の文脈を理解しているか
時間外規制やドライバー不足といった業界の構造的な課題を理解し、それを踏まえたトークが組み立てられているかどうかは、初回接触の質を大きく左右する。業界の文脈を踏まえないトークでは、経営者との会話が単なる売り込みとして流されてしまいやすい。
選定基準2: 価格感度の高さに対応した提案設計ができるか
価格の話に入る前にROIを提示する順序立てができるか、値引き前提の交渉に陥らない提案の組み立てができるかは、成約率を左右する重要な観点になる。価格だけを訴求する代行会社では、値下げ合戦に巻き込まれやすい。
選定基準3: 現場を兼務する経営者への接触経験
日中の運行対応で捕まりにくい経営者に対して、適切な時間帯やチャネルでアプローチしてきた経験値があるかどうかは、実行力に直結する。中小企業の経営者層への架電実績があるかを確認すると、判断材料になりやすい。過去にどのような業種・規模の経営者層にアプローチしてきたか、具体的な接触率のデータを開示できるかどうかも見ておきたい。
選定基準4: 業界団体・口コミを意識したチャネル設計力
テレアポやメールだけに頼らず、業界内の信頼のネットワークを意識したアプローチができるかどうかも見ておきたい。単一チャネルに依存した営業代行では、警戒感の強い業界に対して十分な接点を作れないことがある。
失敗事例から学ぶ事前確認ポイント
物流会社開拓でつまずきやすいパターンを事前に把握しておくことで、営業代行を活用する際のリスクを減らすことができる。
失敗パターン1: 日中の運行対応時間帯に架電を集中させる
経営者が現場業務で最も忙しい時間帯に架電を集中させ、話を聞いてもらえないまま架電数だけが積み上がるケースがある。接触率の低い時間帯にリソースを投じ続けると、費用対効果が見合わなくなりやすい。
失敗パターン2: 価格の話に対応できず商談が停滞する
価格感度の高さを織り込まずに商談を進め、価格の話になった段階で明確なROIを示せず、交渉が停滞するケースは少なくない。事前に投資対効果を数字で示す準備がなければ、価格の話に入った瞬間に商談が止まりやすい。
失敗パターン3: 保守的な文化を無視して最新機能を強く訴求する
IT・DX投資に保守的な文化を理解せず、機能の新しさや先進性ばかりを強調してしまい、「今のやり方で十分」という反応に終始してしまうケースがある。相手の警戒感を下げるための段階的な提案設計がなければ、検討の土台にすら乗らない。
失敗パターン4: 業界内の評判への影響を軽視する
強引な架電や不誠実な対応が業界内の口コミとして広まり、その後のアプローチ全体の難易度を上げてしまうケースもある。物流業界は地域や業界団体を通じたつながりが強いため、一件一件の対応が業界内の評判に直結するという前提を欠いた運用はリスクが大きい。
まとめ:物流会社開拓を機能させるために整えるべきこと
物流会社を新規開拓する営業は、経営者が現場業務を兼務し接触時間が限られる構造、IT・DX投資に対する保守的な姿勢、極めてシビアな価格感度という、業種特有の壁と向き合う必要がある。これらを理解しないまま一般的な法人営業の型を当てはめても、成果にはつながりにくい。
営業代行を活用する場合も、丸投げでは機能しない。以下のような点を事前に整理し、代行会社とすり合わせておくことが望ましい。
- ターゲットが中小・地場運送会社か、中堅・大手物流会社かによってアプローチの重心を変える
- 2024年問題やドライバー不足など、業界の文脈を踏まえたトーク設計にする
- 価格の話に入る前に、ROIや回収期間を数字で示せる資料を用意する
- 業界団体や同業紹介など、テレアポ以外のチャネルも組み合わせる
物流業界の意思決定構造と価格感度を理解した代行会社を選び、業種特性に合わせたトークとチャネルで運用することで、物流会社 営業代行という取り組みは実効性を持つようになる。
3PL・4PLを含む物流業界全体の営業代行の考え方については、物流 営業代行の現実解|3PL・倉庫業の新規顧客獲得で外部活用が機能する条件もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 物流会社への営業電話は、どの時間帯にかけるのが良いですか
経営者が現場業務を兼務していることが多いため、日中の運行対応が落ち着く夕方以降や早朝を狙うと接触しやすいとされる。荷主とのやり取りが集中する時間帯を避けるなど、対象企業の業務サイクルを踏まえたタイミング設計が求められる。
Q. 物流会社向けの営業代行の費用相場はどのくらいですか
架電代行かフィールドセールスまで含むかなど、依頼する業務範囲によって費用は大きく変わる。相場を一律に示すことは難しく、業界の価格感度の高さを理解した代行会社に個別に見積もりを取り、自社の商材単価や回収期間に見合うかどうかで判断するのが実務的である。
Q. 中小の運送会社と中堅・大手物流会社では、どちらを先にターゲットにすべきですか
商材の単価や導入のしやすさによって変わる。初期費用を抑えられ即断されやすい商材であれば、意思決定の速い中小・地場運送会社から着手して実績を積み、その実績を材料に中堅・大手への提案につなげる進め方が機能しやすいとされる。逆に投資規模の大きい商材であれば、専門部署を持つ中堅・大手を軸にした提案設計が必要になる。
Q. 2024年問題以外に物流業界特有の商談トリガーはありますか
燃料価格の高騰やドライバーの高齢化・採用難も、継続的な購買トリガーとして働いているとされる。これらは季節性というより構造的な課題であるため、時期を問わず会話の起点にしやすいテーマである。荷主からの運賃交渉の圧力が強まっている時期も、コスト構造の見直しに関心が向きやすいタイミングとして意識しておきたい。
Q. 営業代行に依頼する前に、自社で最低限用意しておくべきことは何ですか
燃料費・人件費・残業代といった具体的なコスト項目に対する削減効果を数字で示せる資料と、中小・地場向け、中堅・大手向けでメッセージを出し分けたトーク材料を用意しておくことが望ましい。これらが整っていないまま営業代行に依頼すると、価格感度の高い業界特性を踏まえた提案がしづらくなる。